Wi-Fiで使うことができる周波数帯には、「2.4GHz帯」と「5GHz帯」の2種類があります。
厳密に言うともう1種類、超高速な「60GHz帯」もありますが、ごく限られた用途で用いられ機器も非常に高価なため、使う機会はあまりないでしょう。
2.4GHz帯と5GHz帯を比較すると、5GHzの方が高速で安定した通信が利用でき、映像配信サービスの利用などに適しています。
この記事では、Wi-Fiの5GHzで利用できるW52・W53・W56の速度や利用できる環境などの違いについて紹介します。
目次
【WiFi】2.4GHzと5GHzの違いは?
まずは、Wi-Fiの2.4GHzと5GHzの違いについて説明しましょう。
これら2種類の周波数帯は、通信速度に大きな差があります。
理由は、チャネル※数やチャネル同士の干渉の影響などによります。
5GHzの19のチャネルは、「W52」・「W53」・「W56」という3つのグループに分かれ、それぞれに特徴があります。
2.4GHz帯 | 5GHz帯 | |
---|---|---|
チャネル数 | 14 | 19 |
対応無線規格 | IEEE802.11b IEEE802.11g IEEE802.11n |
IEEE802.11a IEEE802.11n IEEE802.11ac IEEE802.11ax |
障害物に対して | 強い | 弱い |
電波の干渉 | 受けやすい | 受けにくい |
対応機器数 | 多い | やや少ない |
結論として、5GHzは通信速度が速く安定してインターネット接続が利用できるのでおすすめですが、2.4GHzも対応機器がとても多く、壁などの障害物に強いため、両方の特徴をよく知っておきましょう。
【2.4GHz帯】便利で人気があり混雑

【出典】エレコム株式会社
2.4GHz帯は、5GHz帯よりも先に登場しました。
対応しているスマホなどの端末や電子レンジなど家電製品の数が非常に多く、古いスマホなどは2.4GHz帯のみ対応しているのがほとんどです。
5GHz帯に対応したスマホや家電製品も増えたのですが、周障害物に対して電波が弱くなるという特性があります。
そのため、壁・天井・床などの素材が金属やコンクリート・ガラス・土壁などである場合、5GHz帯の電波は弱くなるため、2.4GHz帯の方を好んで使う人はまだまだ多いです。
利用者が多いということは、電波が干渉しあって混雑し、通信速度が遅くなることを意味します。
何より2.4GHz帯は14あるそれぞれのチャネルの内、隣接するチャネル(1chと2chなど)はお互い干渉し合うため、速度低下に拍車がかかってしまうのです。
【5GHz帯】より高速で安定している

【出典】エレコム株式会社
それに対し、5GHz帯は通信がより高速で、しかも安定しています。
まず、チャネル数は2.4GHz帯より多い19個で、しかもチャネルが隣接していても電波が干渉し合わないため、安定した回線速度が保たれます。
また、電子レンジなど多くの家電等に使われる2.4GHz帯の電波とは異なるため、それらの干渉も受けません。
高周波で電波の直進性が強いため、まっすぐ、速く通信可能です。
ただし、障害物に弱いのは先述のとおりですので、通信の際に障害物を避けるなどの工夫は必要です。
そして、屋外での使用に関しては、必ずしも高速で安定しているとは言えないのが現状です。
5GHzのW52/W53/W56の違いは?
5GHz帯には、対応しているチャネルによって、W52・W53・W56と3つのグループに分かれます。
それぞれの対応チャネルや使用環境は、以下のとおりです。
対応チャネル | 使用可能な環境 | |
---|---|---|
W52 | 36ch/40ch/44ch/48ch | 屋内のみ |
W53 | 52ch/56ch/60ch/64ch | 屋内のみ |
W56 | 100ch/104ch/108ch/112ch/116ch/120ch /124ch/128ch/132ch/136ch/140ch |
屋外可能 |
このとおり、2.4GHz帯とは異なり5GHz帯を屋外で利用できるのは、W56のみです。
その理由は、5GHz帯が気象衛星などと同じ周波数帯を利用しているためです。
ただし、W52も屋外で使えるようにするため、電波法の省令が改正され、W52は厳しい条件付きで2019年6月より屋外で利用可能となっています。
利用するチャネルは、ルーターに搭載されたバンドステアリングやオートチャネルセレクトモードのような機能により、自動的につながりやすい回線を選択してくれる場合がありますが、よりつながりやすくするために、W52・W53・W56のいずれかに手動で設定するテクニックもあります。
また、W52・W53・W56全てに共通して言えることですが、上空での使用は禁止されています。
屋外使用禁止の5GHz帯のチャネルを屋外で使用した場合、電波法違反で罰則が加えられる可能性もあるため、不安であれば2.4GHz帯を利用する方が良いかもしれません。
W52が最も一般的な5GHz帯

【出典】総務省電波利用ホームページ
W52は、国内で最も多く使われる一般的な5GHz帯です。
使用できるのは屋内に限られていますが、以下の条件付きで2019年6月より屋外でも利用が可能となっています。
屋外でも利用できる条件は以下の3点です。
- 人工衛星に影響を与えない専用機器を利用する
- アクセスポイント・中継器ともに事前に総合通信局に「登録局」の手続きをする
- 利用可能場所が限定(気象レーダーに影響を与えない)
多くの無線LANルーターが、初期設定でW52を優先して使用するようになっているため、場所や環境・時間帯によっては回線が混雑することがあります。
ネットにつながりにくい場合は、以下のW53やW56のチャネルに設定し直すことで、解消されるかもしれません。
【W53】外部レーダーの影響あり
W53は、次のW56と同様に外部レーダーの影響を受けます。
外部レーダーには、気象レーダーや地球探査衛星など重要なものがあり、それらに影響を与えると様々な不具合が生じるため、W53の利用が制限されます。
そのため、W53の使用時にはDFSという機能が起動し、約1分間はレーダーがないかどうかの検知が行われ、その間は通信が停止されます。
外部レーダーを検知すると、自動的に別のチャネルに変更され、再検知が行われます。
また、動作中にレーダーを受信すると、他のチャネルに移動するため、それが原因で通信が途切れる可能性があります。
さらに、W53はW56と異なり、屋外での使用が禁じられています。
そう考えると、屋内で使えて外部レーダーの影響を受けないW52があれば、W53は必要ないように思われるかもしれませんが、実はW53は回線の混雑を回避するために有効な場合があります。
なぜなら、ほとんどの無線LANルーターはW52を優先的に使用する設定のため、時間帯によっては回線が混雑するためです。
【W56】唯一屋外で利用可能
W56は、屋外での利用が唯一利用可能です(W52の一部は除く)。
ただし、電波干渉がないことを確認するため、通信を開始する前に約1分間、DFSによりレーダー電波の検知が行われるのはW53と同じです。
W56の周波数帯は、船舶レーダーや航空レーダーの影響を受ける可能性が高いです。
そのため、沿岸や高地では電波が干渉し合わないために利用できないかもしれませんが、W53よりは屋外でも干渉を受けにくい特徴があります。
無線LAN(Wi-FI)の規格の特徴や速度は?
周波数帯とは別に「規格」もあるので、ぜひ覚えてしまいましょう!
日本の家庭用に使える無線LAN(Wi-Fi)には、6種類の規格があります。
この規格は、米国電気電子学会「IEEE(アイ・トリプルイー)」が定めている国際標準です。
6種類の規格の最大通信速度と周波数帯は、以下のとおりです。
最大通信速度 | 周波数帯 | |
---|---|---|
IEEE802.11b | 11Mbps | 2.4GHz帯 |
IEEE802.11a | 54Mbps | 5GHz帯 |
IEEE802.11g | 54Mbps | 2.4GHz帯 |
IEEE802.11n | 600Mbps | 2.4GHz帯/5GHz帯 |
IEEE802.11ac | 6.9Gbps | 5GHz帯 |
IEEE802.11ax | 9.6Gbps | 2.4GHz帯/5GHz帯 |
このほかにも、60 GHz帯向けの「IEEE802.11ad」もあり、最大通信速度6.8Gbpsですが、普及がほとんど進んでいません。
スマホやパソコンなどでIEEE802.11adに対応している端末はほとんどない上、新たに登場したIEEE802.11axの方がより良いパフォーマンスを出すと期待されているため、今後も利用する機会は少ないでしょう。
6種類の規格、それぞれの特徴を以下にまとめました。
IEEE802.11b/a/g
「IEEE802.11b」・「IEEE802.11a」・「IEEE802.11g」の3種類の規格は、比較的古い規格です。
そのため、最大通信速度が遅く、データ量が多いと通信が途切れたり、切断したりすることがあります。
古い無線LANルーターだと、これらの3種類にしか対応していないこともありますが、最近ではWi-Fi4以降の、より高速な通信規格が登場しているため、通信速度に不満がある人は最新のルーターの導入を検討しましょう。
Wi-Fi 4(IEEE 802.11n)
上の3種類と比べ、IEEE802.11n以降は最大通信速度が大幅にアップしたり、2.4GHz帯と5GHz帯のどちらでも利用できたりするなど、性能がアップしています。
そして、これまでの「IEEE802.11○○」という名称だと種類が多すぎて、区別がつきにくくなりました。
そこで、このIEEE802.11nからはWi-Fi Allianceという業界団体が、従来のIEEEのナンバリングをそのまま利用するのではなく、一般の利用者がだれでもわかりやすいように、規格に世代名を入れることを決定しました。
「Wi-Fi 4」はIEEE802.11nに対応していることを意味し、以降「Wi-Fi 5」、「Wi-Fi 6」と続いていきます。
Wi-Fi 4の特徴は、2.4GHz帯と5GHz帯の両方を使うことができることです。
そのため、障害物に強い2.4GHz帯と、高速通信できる5GHz帯を使い分けることが可能となります。
周波数帯の帯域を手動でいちいち変えるのは面倒ですが、バンドステアリング機能があると、混雑していない帯域を自動的に選択し、接続してくれるので便利です。
例えば、同じ使用環境でも電子レンジやエアコン・証明などIot搭載の家電が稼働するなどすると2.4GHz帯がつながりにくくなりますし、マンションなどで近くの部屋で一斉に5GHz帯が使われると、速度低下につながります。
その他にも、ドアの開閉、スマホの使用などによって2.4GHz帯と5GHz帯のどちらがつながりやすいかは左右されるため、バンドステアリング機能はあった方が良いです。
また、Wi-Fi 4の理論上の最大通信速度は300Mbpsと前のバージョンの10倍以上です。
実行スループットでも100~150Mbpsを出すことができます。
それらのメリットがあるので、家が広い場合や庭があるなど屋外でも利用する可能性がある場合には、2.4GHz帯と5GHz帯とを切り替えながら動画視聴や大容量のデータのダウンロードなどもでき、かなり普及しています。
Wi-Fi 5(IEEE802.11ac)
「Wi-Fi 5」はIEEE802.11acに対応した規格です。
Wi-Fi 5は最大通信速度が6.9Gbpsと、Wi-Fi 4をさらに20倍以上上回っています。
実行スループットも800Mbpsほどで、一般家庭で使用する通信速度としては満足できる速度となります。
その反面、Wi-Fi 5は5GHz帯の周波数にのみ対応しています。
そのため、Wi-Fi 5は障害物や遮蔽物に弱く、ルーターから離れすぎるとつながりにくくなり、さらに屋外での使用が制限されてしまいます。
主にルーターから近い位置で利用するのであれば、Wi-Fi 5の通信速度の速さはスマホゲームや動画配信サービスの利用などを快適に行うのに十分です。
Wi-Fi 6(IEEE802.11ax)
Wi-Fi 6は、IEEE802.11axに対応した規格で、いくつかの新技術の採用で、これまでになかった高速通信を実現しています。
これまでは、光回線でも最大1Gbpsの通信速度でしたが、最大2~10Gbpsの通信速度を実現する回線が、都会を中心に全国的に広がり始めており、それに対応できる規格として、Wi-Fi 6は期待されています。
まず、Wi-Fi 6はWi-Fi 4と同様に2.4GHz帯と5GHz帯のどちらにも対応しています。
そして、最大通信速度は9.6Gbpsで、実行スループットでも1Gbps以上と、Wi-Fi 5をさらに上回っています。
通信が速いだけでなく、安定させるためにOFDMA(直交波周波数分割多重)と呼ばれる無線通信方式が用いられています。
これは、1つのチャネルを分割することにより、複数ユーザーで分け合うことができる仕組みで、利用者が多い環境でも回線が安定する特徴があります。
もちろん、家庭で使用する場合にテレビ・パソコン・スマホ・ゲーム機・音楽・エアコン・調理器具などを同時に多台数ネット接続した場合でも、つながりやすいです。
また、従来の5GHz帯においては「80MHz」の通信帯域でしたが、Wi-Fi 6では「160MHz」にまで通信帯域が拡大されているため、最大スピードが高速化しています。
さらに、Wi-Fi 6は省エネにも貢献します。
TWTという機能により、スマホなどの端末へのデータ通信のタイミングがスケジューリングされ、使わないときにはスリープ状態になるため、バッテリーの節約につながります。
Iot家電で使わない時間が長いものだと、TWTがあれば待機電力の解消につなげることが可能となります。
注意しなければならないのは、Wi-Fi 6は登場して間もないため、Wi-Fi 6に対応した端末が非常に少ないことです。
そのため、Wi-Fi 6対応のルーターを購入しても、しばらくは宝の持ち腐れになる可能性はあります。
ただし、通常は以前の規格も搭載されているため、従来のWi-Fi 4やWi-Fi 5の端末や機器は利用できます。
【まとめ】WiFiの速度は「周波数」ではなく「規格」で決まる
Wi-Fiの通信速度で多くの人が気にするのは、2.4GHz帯か5GHz帯の比較でしょう。
両者の違いは障害物に強いか、他の電波の干渉を受けやすいか、屋外でも利用できるかなど、特徴に違いがあり、確かに重要です。
しかし、実際のWi-Fiの通信速度は、2.4GHz帯か5GHz帯かといった「周波数」の違いではなく、「規格」の違いで決まります。
Wi-Fiの規格は6種類あり、それぞれ周波数帯や最大通信速度などが異なります。
最新のWi-Fi 6が一番おすすめですが、利用できる端末が少ないため、本格的に普及するのはまだ先になるでしょう。
また、5GHz帯で利用できるチャネルはW52・W53・W56の3グループに分かれ、それぞれ利用できる環境などが異なります。